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zoom RSS 米国特許法第112条第6段落の新しい訳

<<   作成日時 : 2008/03/07 22:30   >>

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弁理士会および弁理士会研修所の編集による1979年の 「米国特許法の実務」には、221ページの下から二行目以降に「(3) Means plus Function Clauses」と言う題目の下に米国特許法第112条第3段落(現在の米国特許法第112条第6段落)に基づく請求項の解説が示されています。

先ず、米国特許法第112条第3段落(現在の第6段落)の次のような和訳が項目(a)に示されています。


結合クレーム中の要素は、これを支持する構造、材料または動作をあげることなく、特定の機能(Function)を達成する手段(Means)または工程(Steps)として表現することができる。このようなクレームは、明細書に説明された対応する構造、材料または動作およびこれらに均等なものにおよぶものとする。


これに続いて、222ページの項目(d)および項目(e)には次のような説明が記載されています。尚、下の説明では「means clause」と記載されていますが「means for doing something」と記載するのですから「means」以下は節ではなくて句です。したがって、「means clause」は「means phrase」の誤りです。


(d) また、このmeans clauseは先行技術が許す限りクレームをできる限り広く記載するのに便利である。すなわち、明細書に開示した発明の相異なる数個の実施例(embodiments)に適用できるような一般的(generic)な用語や表現がない場合に、このmeans clauseが使用できる。逆に、代替的実施例をすべて網羅できるような適当な用語や表現があれば、これらを使用すべきである。

(e) means clauseは、新規性が発明の構成要素のcombinationに存在し、先行技術に対する相違点がmeans clauseで定義された構成要素の特定の構造にないような場合、当該発明を定義するのに使用できるのみである。従って、改良点が発明の単一の構成要素の変更にあるようなImprovementの形式のクレームには使用できない。


ここで最初に指摘すべきことは、項目(a)に示されている和訳から項目(d)の説明を導き出すことはできないと言うことです。項目(d)の説明を導き出すには、米国特許法第112条第3段落(現在の第6段落)を次のように解釈しなければなりません。

ある要素が複数の構成について一括して権利を請求している場合には、特定の機能を達成するための手段や工程として当該要素を記載しても構わない。また、その際には構造、材料、諸々の動作を裏付けとして詳述する必要はない。このような機能的様式で記載されている要素は明細書に記載されている対応する構造、物質、諸々の動作やそれらの同等物の保護を求めているものと解釈されなければならない。

すなわち、1979年当時にも米国特許法第112条第3段落(現在の第6段落)をここに新たに提示した和訳のように解釈していた人達がいたと言うことです。

これに対して、項目(e)の説明は「米国特許法の実務」に示されている和訳から直接に得られることは明らかです。ところで、項目(e)の説明は項目(d)の説明と不整合を来しています。

項目(e)の「新規性が発明の構成要素のcombinationに存在し…」とは、例えば、請求項が「X comprising A, B and C」と記載されていた場合に、「AとBとCとの組み合わせ」に新規性がある場合にのみ機能的な記載が許されると解釈していることになるからです。

これに対して、項目(d)では「X comprising A, B and C」の「A」が第一の実施例Aの要件「a1」と第二の実施例Bの要件「b1」と第3の実施例Cの要件「c1」の組み合わせから成り、「B」が第一の実施例Aの要件「a2」と第二の実施例Bの要件「b2」と第3の実施例Cの要件「c2」の組み合わせから成り、「C」が第一の実施例Aの要件「a3」と第二の実施例Bの要件「b3」と第3の実施例Cの要件「c3」の組み合わせから成ると解釈しているからです。

ところで、新規であるかどうかは米国特許法第102条の問題です。請求項に記載されている「AとBとCとの組み合わせ」に新規性があるかどうかと言うことと、「means phrase」を用いて「AやBやC」を機能的に記載することとは無関係です。

すなわち、「X comprising A, B and C」の「A」や「B」や「C」をなぜ機能的に記載することができるのかと言えば、それは例えば明細書に開示されている三種類の実施態様がそれぞれ「a1、a2、a3」、「b1、b2、b3」、「c1、c2、c3」で構成されている場合に、最初の構成要素「a1、b1、c1」が互いに構造は相違していても機能が同じだからです。

構成要素「a1、b1、c1」を機能αに基づいて一纏めにすることができるからこそ、構造の異なる構成要素「a1、b1、c1」を要素「A」で表して、この要素「A」を機能的に記載することができるのです。

また、第二の構成要素「a2、b2、c2」も機能βに基づいて一纏めにすることができるからこそ、構造の異なる構成要素「a2、b2、c2」を要素「B」で表して、この要素「B」を機能的に記載することができるのです。

さらに、最後の構成要素「a3、b3、c3」も機能γに基づいて一纏めにすることができるからこそ、構造の異なる構成要素「a3、b3、c3」を要素「C」で表して、この要素「C」を機能的に記載することができるのです。

項目(e)の説明はアメリカの特許庁が採用している解釈です。効率化の追求による収入増を実現するためにアメリカの特許庁がこの解釈を採用したことが恐らくは災いして1979年以降に項目(e)の解釈が急速に広まって項目(d)の解釈が潰されていったものと思われます。

機能的な記載の審査に混乱を招来しているアメリカ特許庁の解釈を正すために拙著「特許請求の範囲の論理的探究」では次の和訳を提示しました。


(機能は同じでも構成の異なる複数の構造体の)寄せ集めについて権利を請求している一要素は、特定の機能を達成するための手段や工程としてこれを記載することができ、その際には構造、材料、諸々の動作を裏付けとして詳述する必要はない。このような機能的様式で記載されている要素は明細書に記載されている対応する構造、物質、諸々の動作やそれらの同等物の保護を求めているものと解釈されなければならない。


しかし、ここではさらに進んで次のような訳を提示することにします。


ある要素が複数の構成について一括して権利を請求している場合には、特定の機能を達成するための手段や工程として当該要素を記載しても構わない。また、その際には構造、材料、諸々の動作を裏付けとして詳述する必要はない。このような機能的様式で記載されている要素は明細書に記載されている対応する構造、物質、諸々の動作やそれらの同等物の保護を求めているものと解釈されなければならない。


米国特許法第112条第6段落をこのように解釈すれば機能的な表現に関する統一的な審査基準が確立されます。したがって、どのような機能的表現が請求項に記載されていても統一的な審査をすることができるようになります。今日生じているような審査上の混乱は一掃される筈です。

米国特許法第112条第6段落の原文を改めて次に示します。


An element in a claim for a combination may be expressed as a means or step for performing a specified function without the recital of structure, material, or acts in support thereof, and such claim shall be construed to cover the corresponding structure, material, or acts described in the specification and equivalents thereof.

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(d)と(e)が不整合であっても両方を主張するするやり方lawyering strategyはあります。そうしないと、もし事件が、司法へ上がったときに、主張を変えることが出来なくなる可能性があります。貴方は今迄何回基礎勉強が出来ていないと、云われましたか。読者の皆さんへ。「この投稿者(大バカ、大間違いの)福生亜留ふっさある」の云うことは信用しないこと。福生亜留ふっさある殿へ。自分自身が大バカであることを自覚して、弁理士会をバカにすることは止めるべきです。
小職新人
2008/03/16 13:45

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